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沖縄ひとり旅リターンズ⑤ ~風を感じて~

沖縄2日目は、マウンテンバイクで戦跡めぐり。
朝まで雨音がすごかったほどの大雨だったのに、8時を過ぎたあたりから空は明るくなっていた。
前の日の夜から、天気予報を何度も何度も見ながら、雨が降ったらレンタカー、雨がやんだらレンタサイクルと決めていた。寝る前には、どうやら雨は午前中にやみそうにないと判断し、レンタカーで行く覚悟をし、行き先をあちこち決めていたのに、朝になって再び自転車モードに気持ちを切り替えていた。

レンタサイクルセンターには、電動自転車とマウンテンバイク、ママチャリの3種類が用意されていた。
どこまで行けるのか、実際に走りきれるのか、体力は持つのか、まったく予想もつかないまま、どれにしたらいいか相談した。気持ち的には電動自転車で楽して行こうかと思ったけど、おすすめされたのはマウンテンバイク。
「男の方は大体、マウンテンバイクで行かれますよ。」
「ひめゆりの塔まで行きたいんですけど、行けますか?」
「みなさん、大体、あちらまでぐるっと行って帰ってきますよ。」
ということで、多分大丈夫だろうという“過信”のもと、マウンテンバイクを借りた。
実は、マウンテンバイクに乗ったのは初めてだった。
乗る前にまたいでみたけど、なんか、いけそうな気配。
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スタートして30分くらい、まちなかを走っているときは快適な気分だった。
こりゃあいいぞ、なんか気分爽快だし、街の姿を楽しみながら目的地へ向かった。
ところが、1時間くらい走ったあたりから、ひざに痛みを感じ、もう1時間くらい走ったときには、わき腹に激痛を感じ始めていた。
多分、普段使わない動きをしているため、一箇所に余計な力がかかっていたんだろう。さわると悲鳴をあげそうなくらい、あばら骨の一箇所が炎症を起こしていた。
このまま走り続けるべきか、今のうちに帰るべきなのか。
自転車は夕方6時までに返さなければならない。

ときどき休憩をしながら、あばら骨の様子を探る。
けど、なぜかやめようという気にはならなかった。
どんだけ痛くても、ひめゆりの塔まで行くんだという気持ちがあった。
途中で漕げなくなったら、まあ、なんとでもなるだろうと開き直っていた。

地図を見ながら、道だけは間違わないよう、自転車を漕ぎ続けた。
途中、迷う三叉路があったところで、自動販売機にジュースを詰めていたお兄さんに道を聞いた。
「ひめゆりの塔ってこっちの道でいいですか?」
すると、「ひめゆりの塔、遠いですよ。」と笑ってる。
ちょっと前に見た標識では、『ひめゆりの塔 20km』と書いてあった。確かに自転車だと遠い。
地元の人の感覚でも自転車で行くところじゃないってことなんだろう。
「ええ、遠いのは知ってますけど、こっちでいいんですよね。」と確認し、再び漕ぎ出した。

わき腹の痛みは一向に消えないし、どんどんひどくなっているのは分かった。
けど、僕は、どうしても1日中自転車に乗って、走りきりたいと思っていた。
それは何かやったことのないことをやり遂げたいという思い、ただ、それだけだった。
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平坦な道のときはよかったけど、途中から延々と続く坂道が続き、10段変速の一番軽いギアで走っても、幼児の三輪車並みのスピードしか出ないところもあった。
わき腹の痛みもあり、正直、泣きそうなくらい苦しかった。
「うー」とか「アー」とか「くそーっ」とか叫びながら、走ってたところもある。
レンタカーなら楽に行けるところに、なんでこんな苦しい思いをしてんだろうと。

けど、今、思えば、その苦しみがよかった。
今でも、あの1日のことを思い出す。あの1日はよかった。
46歳のおっちゃんが、ひとりでひたすら自転車を漕いでいた。
結局、50~60キロくらい走ったと思う。
自転車をやってる人からすれば50キロなんて大したことない距離だと思う。
けど、自転車を返したとき、自転車初心者の僕には、すごく充実した達成感があった。
その達成感は、この笑顔を見てもらえば分かると思う。
風を感じながら、自転車で1日走り続けた。
こんな旅もいいなと。                        (2009.4 沖縄にて)
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by huehuki-pi-hyoro | 2009-09-26 22:39 | 旅日記  

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