サルでもわかる楽しい胃カメラ講座
2005年 10月 08日
人間ドックの検査結果が自宅に届いた。そこに見慣れぬ文字が見える。
「胃角部-粘膜不整(含:異常レリーフ・ひだ太まり)」・・・判定:D2(要精密検査)。
「胃部内視鏡検査を受けてください」 と医師からの指示が。えっ?胃?全く身に覚えがないのに、胃がいつのまにかやられてたのか。全く身に覚えがないのが逆に怖かった。がんではよく聞く話だ。その瞬間、笑えもしないが、胃が重くなり、検査までの3日間、鈍痛ともいえる胃痛が続いた。もう逃げも隠れもできない。1日も早く検査を受けなければ。日々のストレスに気づかないところで体が蝕まれてたんだろう。親父も潰瘍にやられている。ちょうど同じ位の歳にやって、そのまま死んでしまった。遺伝か。潰瘍なら治るだろうけど、がんもありうる。初期がんなら何とかなるだろう。最悪、そこまでは覚悟した。それ以上は考えなかったけど、検査の前日は、東京までの出張の往復の新幹線のなかでも気分は重かった。
検査の前日は、午後9時以降絶食。8時過ぎ、新幹線のなかで弁当を食べながら、検査のことを考えてた。いらぬ情報は入れずに行こうと思いながら、やっぱ、ちょっとだけ予備知識をと思って、その夜、インターネットで「胃部内視鏡検査」を検索。『最近は、以前ほど苦痛ではなくなりました。人によっては、バリウム飲んで行う透視検査の方が苦痛という人もいます。』という言葉に、一安心。なんだ、大したことねえじゃないか。と、安心してぐっすり寝る。
朝9時。快適な眠りのおかげですこぶる快調な状態で、いざ胃カメラ検査へ。一緒に受付した僕よりも年輩らしき緊張気味のおじさんにも、「初めてですか」などと気軽に挨拶。検査に対する不安は全くなく、かなりリラックスしてた。もちろん、検査の結果、最悪な事態もありうることは覚悟していたけど、表面上はリラックスしてた。
受付のいすに座ると、モンゴリアンチョップのキラー・カーンみたいなごっつい看護士が登場。(←土田君向けネタです。)リラックスさせようとしてるのか、オーソドックスな小ギャグをまじえながら、胃カメラ検査の全貌を説明。3人いたうち僕はトップバッターだった。他の2人は興味津々と僕の検査準備の一部始終を見ている。もちろん、僕ははじめてだから、何をするか分からないまま検査は始まった。
①胃の掃除:まずは、胃の掃除ということで、炭酸みたいな薬を一服飲む。これはなんともない。
②注射:続いて左腕に筋肉注射。鎮静剤だと思う。これもなんともない普通の注射。
③麻酔薬:こっからが本番。待合のソファーに枕を置き、のどが拡がるように上を向いて大きく口を開けさせられた。そこに、ゼリー状の麻酔薬を流し込む。(量はヤクルト1本分くらいだろうか。)のどの奥に入ってきたものを堰き止められず、少しごっくん。ごっくんしたその直後、キラー・カーンは、「のどの奥で止めてくださいね。飲んではいけませんよ。」遅いよ。飲んじゃったよ。「アワアワアワ・・・」(喉に手をあて、「少し飲んじゃいました。」と伝えたつもり。)「少しくらいならいいですよ。」とキラー・カーン。伝わっていた。そのゼリーを飲み込まないように、のどの奥に止めて薬をのど全体に浸みこませる。そんなテクニックないって。けど、なすがままに、どうやらゼリーはゆったりと浸みているような気はしてきた。待つこと5分。タイマーの音と同時にキラー・カーン再登場。「どうですか?効いてきましたか。」
「アワアワアワ・・・」(「効いてると思います。」といったつもり。だから、しゃべれないんだから何か聞くなよな。)これでゼリーの麻酔は終了。まだ口に残ってるのが気持ち悪く「アワアワアワ・・・」(「うがいはしてもいいんですか?」)「さっき、何を聞いてたんですか。吐き出すだけ。クチュクチュは絶対ダメですよ。」とキラー・カーンに怒られる。口に残るゼリーをティッシュに吐き出し、さらに洗面所で残りを吐き出した。
「じゃあ、本当に効いているかどうか、もうひとつ麻酔の薬を入れます。これは、すごく苦いです。麻酔が効いてなかったら耐えられるもんじゃありません。」(おい、効いてなかったらどうなんだよ。)「じゃあ、いれますね。マウスペットみたいなスプレーでシュッ、シュッっと3、4回噴きかけられた。「どうですか?大丈夫そうですね。100%OKです。いや、これなら200%OKです。」見た目でわかんのかよ。苦味を感じてんですけど。そんな意見をいう間もなく、「じゃあ、検査室へどうぞ。」
中にいたのは男の医者1名と男の看護士1名。看護婦はいないのかよ。ベッドに横たわり、体は横向け、顔の1m先には画像モニター。マウスピースを口に含み、よだれ受けが顔の下に。「じゃあ、始めますね。」本当に簡単な説明だけで、あっさりとはじまった。何か入ってくるのは分かった。そしてここからがひとつのヤマ。
「じゃあ、飲み込んでください。」飲み込む行為をしないと奥に入っていかない。ごっくん。すんなり行ったと思いきや、「オエー」「オエー」と2回反射。うー、く、苦しい。さらに、数秒後、胃に入ったあたりだろうか。また「オエー」と反射。「暴れるなあ。」 と医者。きついっす。やめてもいいですか。泣きそうだった。そこからは我慢との勝負だった。最初は画面を見てたけど、3度目の反射でもう画面を見るのは諦めた。大腸の内視鏡検査のときは、麻酔が効いて意識朦朧状態とはいえポリープとるところまではっきりと見てたけど、今回は、そんな余裕は全くなかった。
反射する僕の背中を、看護士がさすってくれていた。(ああ、せめて看護婦だったらなあ・・・)リラックスさせようと、霧状の水を吹きかけてくれたり、風を送ったりしてくれていた。そのやさしさに禁断の愛をほのかに感じてしまった僕は何なんだろう。つらいときのやさしさって、そんな気分にさせるんだろうか。
「では、胃のなかに空気を入れます。ゲップはしないでくださいね。ゲップをすると検査が長引きますよ。」 拷問だった。ゲップ出るって。ゲップが出そうになる信号が脳に来るのを、違う方向に向けるのに必死だった。検査が長引くのはいやだ。僕の脳への指示はこうだった。「違うことを考える。違うことを考える。」何と言う指示だ。けど、なんとか脳は指示に従ってくれた。
検査の途中までは、何もないかのように静かに進んだ。ところが、途中から医師の様子が明らかに変わった。「あぁああ」 (「これかあ」、とでもいいたげな声)、「うーん」、再び「あぁぁぁ」とさっきよりも大きい反応。間違いなく何かあったな。「じゃあ、色をつけてもっと詳しく見ますね。」詳しく見るということは、まあ、そういうことなんだろうな。「じゃあ、最後に組織をとります。」何かあったときには、組織をとると最初に言われた。その言葉を聞いて鼓動が一気に高まった。あきらめた。闘病生活が始まる。
胃カメラが口から出るときは、すんなり出て行った。すっきりした。
すぐさま、検査結果。医師の机のモニターに4枚の写真が見える。
「じゃあ、座ってください。」
覚悟は決めていた。
「非常にきれいな胃です。」
あれっ。本当ですか、先生。
握手したかった。抱きついてもよかった。(また、禁断の愛か・・・。)
「ただ、ちょっとだけ、潰瘍の跡らしき傷があるんですけど、全く問題ないです。多分、X線検査では、これがひっかかったんだと思いますよ。非常にきれいな胃です。一応、組織とりましたので、来週、結果を聞きにきてください。」
じゃあ、あの「あぁ」とか「うぅ」は何?
なかなか、見つからなくて、その傷を見つけたときの「あぁ」だったのか。組織をとったのは検査ついでなんだろう。
出口で、キラー・カーンが笑顔で迎えていた。
「この後は、12時まで水分、12時半までは、食事をしてはいけませんよ。いいですね。」としつこいくらいの念押し。まあ、いいや、分かりましたよ。
「口をゆすぎたいんですけど、いいですか?」
「ガラガラはだめですよ。クチュクチュなら今度はいいです。」
はい、クチュクチュだけします。
検査終了後、すぐに女房に「異常なし」のメール。
まあ、つらい検査だったけど、きれいな胃であることが分かっただけでもよしとしようか。けど、しっかり検査代8,500円とられた。
以上、サルでもわかる楽しい胃カメラ講座でした。皆さんが体験するときには、この話思い出してください。ちょっとは参考になるでしょう。
「胃角部-粘膜不整(含:異常レリーフ・ひだ太まり)」・・・判定:D2(要精密検査)。
「胃部内視鏡検査を受けてください」 と医師からの指示が。えっ?胃?全く身に覚えがないのに、胃がいつのまにかやられてたのか。全く身に覚えがないのが逆に怖かった。がんではよく聞く話だ。その瞬間、笑えもしないが、胃が重くなり、検査までの3日間、鈍痛ともいえる胃痛が続いた。もう逃げも隠れもできない。1日も早く検査を受けなければ。日々のストレスに気づかないところで体が蝕まれてたんだろう。親父も潰瘍にやられている。ちょうど同じ位の歳にやって、そのまま死んでしまった。遺伝か。潰瘍なら治るだろうけど、がんもありうる。初期がんなら何とかなるだろう。最悪、そこまでは覚悟した。それ以上は考えなかったけど、検査の前日は、東京までの出張の往復の新幹線のなかでも気分は重かった。
検査の前日は、午後9時以降絶食。8時過ぎ、新幹線のなかで弁当を食べながら、検査のことを考えてた。いらぬ情報は入れずに行こうと思いながら、やっぱ、ちょっとだけ予備知識をと思って、その夜、インターネットで「胃部内視鏡検査」を検索。『最近は、以前ほど苦痛ではなくなりました。人によっては、バリウム飲んで行う透視検査の方が苦痛という人もいます。』という言葉に、一安心。なんだ、大したことねえじゃないか。と、安心してぐっすり寝る。
朝9時。快適な眠りのおかげですこぶる快調な状態で、いざ胃カメラ検査へ。一緒に受付した僕よりも年輩らしき緊張気味のおじさんにも、「初めてですか」などと気軽に挨拶。検査に対する不安は全くなく、かなりリラックスしてた。もちろん、検査の結果、最悪な事態もありうることは覚悟していたけど、表面上はリラックスしてた。
受付のいすに座ると、モンゴリアンチョップのキラー・カーンみたいなごっつい看護士が登場。(←土田君向けネタです。)リラックスさせようとしてるのか、オーソドックスな小ギャグをまじえながら、胃カメラ検査の全貌を説明。3人いたうち僕はトップバッターだった。他の2人は興味津々と僕の検査準備の一部始終を見ている。もちろん、僕ははじめてだから、何をするか分からないまま検査は始まった。
①胃の掃除:まずは、胃の掃除ということで、炭酸みたいな薬を一服飲む。これはなんともない。
②注射:続いて左腕に筋肉注射。鎮静剤だと思う。これもなんともない普通の注射。
③麻酔薬:こっからが本番。待合のソファーに枕を置き、のどが拡がるように上を向いて大きく口を開けさせられた。そこに、ゼリー状の麻酔薬を流し込む。(量はヤクルト1本分くらいだろうか。)のどの奥に入ってきたものを堰き止められず、少しごっくん。ごっくんしたその直後、キラー・カーンは、「のどの奥で止めてくださいね。飲んではいけませんよ。」遅いよ。飲んじゃったよ。「アワアワアワ・・・」(喉に手をあて、「少し飲んじゃいました。」と伝えたつもり。)「少しくらいならいいですよ。」とキラー・カーン。伝わっていた。そのゼリーを飲み込まないように、のどの奥に止めて薬をのど全体に浸みこませる。そんなテクニックないって。けど、なすがままに、どうやらゼリーはゆったりと浸みているような気はしてきた。待つこと5分。タイマーの音と同時にキラー・カーン再登場。「どうですか?効いてきましたか。」
「アワアワアワ・・・」(「効いてると思います。」といったつもり。だから、しゃべれないんだから何か聞くなよな。)これでゼリーの麻酔は終了。まだ口に残ってるのが気持ち悪く「アワアワアワ・・・」(「うがいはしてもいいんですか?」)「さっき、何を聞いてたんですか。吐き出すだけ。クチュクチュは絶対ダメですよ。」とキラー・カーンに怒られる。口に残るゼリーをティッシュに吐き出し、さらに洗面所で残りを吐き出した。
「じゃあ、本当に効いているかどうか、もうひとつ麻酔の薬を入れます。これは、すごく苦いです。麻酔が効いてなかったら耐えられるもんじゃありません。」(おい、効いてなかったらどうなんだよ。)「じゃあ、いれますね。マウスペットみたいなスプレーでシュッ、シュッっと3、4回噴きかけられた。「どうですか?大丈夫そうですね。100%OKです。いや、これなら200%OKです。」見た目でわかんのかよ。苦味を感じてんですけど。そんな意見をいう間もなく、「じゃあ、検査室へどうぞ。」
中にいたのは男の医者1名と男の看護士1名。看護婦はいないのかよ。ベッドに横たわり、体は横向け、顔の1m先には画像モニター。マウスピースを口に含み、よだれ受けが顔の下に。「じゃあ、始めますね。」本当に簡単な説明だけで、あっさりとはじまった。何か入ってくるのは分かった。そしてここからがひとつのヤマ。
「じゃあ、飲み込んでください。」飲み込む行為をしないと奥に入っていかない。ごっくん。すんなり行ったと思いきや、「オエー」「オエー」と2回反射。うー、く、苦しい。さらに、数秒後、胃に入ったあたりだろうか。また「オエー」と反射。「暴れるなあ。」 と医者。きついっす。やめてもいいですか。泣きそうだった。そこからは我慢との勝負だった。最初は画面を見てたけど、3度目の反射でもう画面を見るのは諦めた。大腸の内視鏡検査のときは、麻酔が効いて意識朦朧状態とはいえポリープとるところまではっきりと見てたけど、今回は、そんな余裕は全くなかった。
反射する僕の背中を、看護士がさすってくれていた。(ああ、せめて看護婦だったらなあ・・・)リラックスさせようと、霧状の水を吹きかけてくれたり、風を送ったりしてくれていた。そのやさしさに禁断の愛をほのかに感じてしまった僕は何なんだろう。つらいときのやさしさって、そんな気分にさせるんだろうか。
「では、胃のなかに空気を入れます。ゲップはしないでくださいね。ゲップをすると検査が長引きますよ。」 拷問だった。ゲップ出るって。ゲップが出そうになる信号が脳に来るのを、違う方向に向けるのに必死だった。検査が長引くのはいやだ。僕の脳への指示はこうだった。「違うことを考える。違うことを考える。」何と言う指示だ。けど、なんとか脳は指示に従ってくれた。
検査の途中までは、何もないかのように静かに進んだ。ところが、途中から医師の様子が明らかに変わった。「あぁああ」 (「これかあ」、とでもいいたげな声)、「うーん」、再び「あぁぁぁ」とさっきよりも大きい反応。間違いなく何かあったな。「じゃあ、色をつけてもっと詳しく見ますね。」詳しく見るということは、まあ、そういうことなんだろうな。「じゃあ、最後に組織をとります。」何かあったときには、組織をとると最初に言われた。その言葉を聞いて鼓動が一気に高まった。あきらめた。闘病生活が始まる。
胃カメラが口から出るときは、すんなり出て行った。すっきりした。
すぐさま、検査結果。医師の机のモニターに4枚の写真が見える。
「じゃあ、座ってください。」
覚悟は決めていた。
「非常にきれいな胃です。」
あれっ。本当ですか、先生。
握手したかった。抱きついてもよかった。(また、禁断の愛か・・・。)
「ただ、ちょっとだけ、潰瘍の跡らしき傷があるんですけど、全く問題ないです。多分、X線検査では、これがひっかかったんだと思いますよ。非常にきれいな胃です。一応、組織とりましたので、来週、結果を聞きにきてください。」
じゃあ、あの「あぁ」とか「うぅ」は何?
なかなか、見つからなくて、その傷を見つけたときの「あぁ」だったのか。組織をとったのは検査ついでなんだろう。
出口で、キラー・カーンが笑顔で迎えていた。
「この後は、12時まで水分、12時半までは、食事をしてはいけませんよ。いいですね。」としつこいくらいの念押し。まあ、いいや、分かりましたよ。
「口をゆすぎたいんですけど、いいですか?」
「ガラガラはだめですよ。クチュクチュなら今度はいいです。」
はい、クチュクチュだけします。
検査終了後、すぐに女房に「異常なし」のメール。
まあ、つらい検査だったけど、きれいな胃であることが分かっただけでもよしとしようか。けど、しっかり検査代8,500円とられた。
以上、サルでもわかる楽しい胃カメラ講座でした。皆さんが体験するときには、この話思い出してください。ちょっとは参考になるでしょう。
by huehuki-pi-hyoro | 2005-10-08 10:46